□□□□□□□セクシー・コメディ□□□□□□□「コンクリート・ジャングル」
その頃、私は最悪な状態だった。
生理が遅れていた。
なんだか気持ち悪い。
吐き気がする。眩暈もする。
お腹が張る。
絶対、妊娠した…!
そう思い、ある日、勇気を出してケイタに「私、出来たかも」と告げた。
するとケイタは「ええ…」と眉間に皺を寄せてそっぽを向き
「なんかの間違いでしょ!」
と吐き捨てるように言った。
…私は傷付いた。
プロポーズしてくれるかも、と密かに期待していたから。
「アハハ!そうだよね…」
私はちょっと笑ってみたけど、心は崖から突き落とされた気分だった。
そして、ケイタの言葉通り、気のせいだった。
次の日、赤いお印が来た。
吐き気はちょっとした体調不良だったらしい。
精神状態の悪さは仕事にも影響し、ミスを連発した。
ある日、部長のコノヤマに会議室に呼び出された。
昨日、私のミスのせいで、課員全員が残業して尻拭いする羽目になった。
コノヤマは激怒しているのだろう。
コンコン。
「失礼します」
窓の方を向いて、コノヤマが立っていた。
誰もいない薄暗い密室で、コノヤマは叱責するわけでもなく私に背をむけたまま
「…皆川さん。
どうしたんだよ?何があったんだ?」
と猫撫で声で尋ねてきた。
その声が優しくて、私はつい、泣いてしまったのだ。