□□□□□□□セクシー・コメディ□□□□□□□「コンクリート・ジャングル」
薬指に嵌められた小さなダイヤモンドの指輪。
それはケイタからの贈られた愛の印だ。
力士は感嘆の溜息を吐いた。
「いいわね…ありす。
絶対幸せになりなさいよ。
私も煙草をやめて、もう一度、歌の道で頑張ろうかなあ…」
「そうですよ!
姫さんなら、出来ますよ」
「今日はもう、仕事なんてする気になれないわね…
インターナショナルランドマークホテルでお茶でもしよう?ケーキ食べよう。
私、奢るから!」
「え、でも…」
「いいって。
それくらいのお金あるから。
ご祝儀代りよ。披露宴するなら、
私、アヴェ・マリア歌おうか?」
「披露宴なんてしないですよ~
お金ありませんから」
私と力士は喫煙ルームを後にした。
エレベーターを使い、外に出る。
周りは摩天楼のようなビルが立ち並ぶ。
アスファルトの道を笑いさざめきながら、力士と並んで歩いていると、
ふわりと柔らかな南風が
私の頬を撫でた。
力士がアヴェ・マリアを口ずさむ。
その歌声が風に乗る。
私は小さく切り取られた青空を仰ぎ、思う。
…こんなに優しい風が吹くのなら、
このコンクリート・ジャングルも
悪くない、と。