淡色ドロップス
見覚えがあったことに
驚いていたのも束の間
「朔」
「あ、瀬野くん。探してた本あった?」
「(ヤバッ)」
背中から聞こえてきた声に
心臓がドキリと跳ね上がる。
「うん、あった」
「良かったねっ。私のはまだ新刊出てないみたいだし、いいや」
仲睦まじい会話と共に遠ざかっていく足音。それが完全に聞こえなくなった瞬間張り詰めていた空気が弾けた。
「やあー、セーフだったね」
「うん、ごめんさっき」
「そうだよ、吃驚した〜」
私もだよ。
まさかあの感じの良いお姉さんが瀬野センセーの彼女だったなんて…。
気持ちだけとはいえ、あの人から瀬野センセーを奪いたいなんて思ってたんだ。
チクリ。
痛む良心を手で摩る。