淡色ドロップス
「──く、さく」
「…ん、ぅ」
「起きろ帰るよ」
「へ…はれ、」
眩い人工的な光に目を細めながら捉えた人物──瀬野くんに私は只々呆然とするばかりであった。
なんで? なんでここにいるの?
だってここ居酒屋さんなのに。
むくりと背中から畳を離し、起き上がる。
「あ朔大丈夫〜?」
サークル仲間たちが口々に懸念の声を掛けてくる中、私は回らない頭を手でトントンと叩いた。
その間に瀬野くんは私のバッグと上着を手に持つと、私の身体を持ち上げる。
「ひゃっ」
正確にいうと
お姫様抱っこだった。
驚きの声を上げる横で女子たちの黄色い歓声が上がる。恥ずかしさに元々熱かった顔が更に熱くなる。
「わたし歩けるよっ」
「うっさい暴れるな」
足をバタつかせるも、瀬野くんの不機嫌な言葉によってすぐに鎮められる。
瀬野くんは個室を出て行く最後に何故か川口くんを一瞥した。
そうこうしているうちにタクシーが停まり私は雑にその中へ押し込まれた。