淡色ドロップス
だけど、すぐに強気な顔へと変わり
「だって由仁が可愛いんだもん!」
と、よく分からん叫びを
階段の踊り場で披露された。
周りの視線が一瞬俺らに集まる。
俺は黙ってソイツの頭を軽く引っ叩いた。
「っいた! なに?!
本当のことだもん!」
「うるせー。退け、邪魔」
「ちょっ、」
スタスタ、と一度下った段を上がっていくと背後から、「ありがとう!」なんて言葉が聞こえた。
「…」
佐伯に関する事はなるべく避けたかったはずなのに結局俺は馴染みの立ち入り禁止が貼ってある先を上がるんだ。
そうしている自分に腹が立つけども
「おいそこの男好き」
「な、なかの~…」
佐伯の顔を見たら放っておけずにはいられなくなるのだ。
佐伯は俺の顔を見た途端、肩の力を抜いたように息を吐いた。
これ、俺だけが見れる
特権だと思っている。
こういう瞬間を味わうときだけ、幼馴染みで良かったと思うんだ。
自分に都合のいい気持ちを嫌に感じながら俺は佐伯の隣に腰掛けた。
「振られた〜…」
「いや、だろうな」
「今度こそ上手くいくと思ったんだけどなあ…」
佐伯は顔を膝小僧に
押し付けそう呟く。
どっからくるんだその自信は。