淡色ドロップス
目の前の窓から見えるオレンジ色の空が、立ち入り禁止の階段を照らす。
「…ドンマイ」
「うっさい。それヤダ」
「悪かったな気の利いた言葉言えなくて」
「全くだ」
ふふ、なんて口を緩ませて笑う佐伯に、いちいちドキドキする自分が腹立たしい。
俺だけだ、全部。
ドキドキしてるのも
もどかしく感じているのも
この空間を有効活用したい、なんて思ってるのも。
「中野、あたし、影で男好きって言われてるでしょ」
「え、影どころか公の場で言われてんだけど」
「…今のかなり深く刺さった」
「ざまあみろ」
『男好き』って言われてること知ってんのかよ。
別段気にしない顔で笑う佐伯に余計にイラつきが募る。
「ひっどー。なんで中野ってそんなに口悪いの。 大丈夫? 友達いる?」
「ぶっころ」
「ついでに短文すぎる」
「なあ」
───────俺じゃダメなわけ?