淡色ドロップス
「…なかの? 中野?!」
「は…」
上から降って来る声に顔を挙げれば、アイツがダダッと下りてきた。
思考が一気に止まったと同時にさっきまで考えていた女々しい葛藤にカッと熱が湧く。…最悪のタイミングだ。
「何してんの、こんなとこでっ」
「〜〜っ」
「なかの…? すごい顔赤いけど、そんなに殴られたの? 痛い? 大丈夫?」
懸念そうな顔で質問攻めする佐伯は、俺の下までくると同じようにしゃがんだ。
必然的に上目遣いになる佐伯を直視出来ず、俺はそっぽを向きながら言う。
「…お前こそ、授業は?」
「体調悪いって言って、抜け出してきた。ていうか、鼻血出たの?! 本当に大丈夫?」
「…おう」
佐伯の心配ぶりに圧倒されたが
その反面やっぱりどこか嬉しさもあった。
こんなことぐらいで上がったり下がったりしている鼓動が憎い。