淡色ドロップス






「立てる?」

「痛くて座ってたんじゃねーよ」

「そんな鼻にティッシュつめながら言われても…」


ぷぷっ、と笑みをかみ殺す佐伯にイラっとし、俺は無理やり鼻からティッシュを抜いた。


ていうか、なんだよ、意外と落ち着いてんじゃねーか…。

予想しなかったことに思わず

「理由(わけ)聞かねえの?」

なんて、言うと

佐伯は少し首を傾けながら、うーん、と唸った。


「聞いて欲しいの?」

「ほしくねえ」


自分で言っておきながら矛盾めいてる。


「じゃあ、あたしも聞かない」


言ってまた笑うけど俺は消化不良だ。

なんだか気持ちが腑に落ちない。


佐伯だったらこういうとき

嫌でも問い詰めてくるはずだ。


タンタン、と階段を下りてくと当たり前のようにその後を佐伯がついてくる。



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