淡色ドロップス
ああ、もうなんでよ。
夏がいない前だと、心音は落ち着いてるし変に焦ったりしないし、余裕のよっちゃんなのに、
そこに夏が加わるだけで私は平常ではいられなくなるんだ。
それがすごく怖い。
「っひ、く…」
夕日があたしの涙を照らす。
ローファーの周りにはシミがたくさん浮かんでいた。それがあたしの情けない雫だと思うと、また更に泣けてくる。
「…、ウソだよ、どっちでもいー、なんて…っ、」
「…」
夏の声が聞こえないことがこんなにも怖いなんて、知らなかった。
はやく、なんか言って。
頭をグシャッと手で崩しながらいきなりしゃがみ出す夏。目元の雫を拭う。
「…してーんだけど、」
なにが、なんて空気の読めないことは言わない。それはきっとあたしも同じだ。
夏はこれ以上ないくらい顔を真っ赤にしながら、小さく口を開けた。
「でも、どう迫って、どう持っていって、どうキスしたらいーか、分かんなかったんだよ……」
「、」
なんだ…。
なんだ、なんだ。
夏も分かんなかったんだ。
笑顔と共に涙が一粒零れた。