淡色ドロップス
なんとなくだけど、
夏との歩幅が掴めてきた気がした。
「私も、よく分かんないよ。でも、夏となら分かんなくてもいいから、したい」
そう訴えれば、夏がビックリしたように目を丸めて、顔を真っ赤に染める。
「じゃあ、こっちきて」
吐息交じりに、呟く夏。
言われた通り、足を前に出して夏に近寄った。距離にしてきっと数センチ。
「…」
「…」
「……目ぇ瞑れよバカ」
ちゅ。
リップ音が微かに響いて、すぐに止んだ。
瞑れよバカ、なんて言っておいて、瞑る間すら与えない出来事だった。
あまりの呆気なさに今のがキスかすら朧げな私は、パチパチと瞬きを繰り返す。
「……どうする?」
「ど、どうするって」
恍惚な目で私を見下ろす夏が、なんだか色っぽく見えて仕方がない。
「もう一回する?」
少し黙って頷いたら、優しく唇を塞がられて。これがキスというのなら、私は最高に幸せだと、夏のシャツを握りながら思ったのだった。
・
・・
・・・
・・・・
「キスも知らない高校生」
完