淡色ドロップス
その日は最低で最高の日だった。
わたしは普通の共学に通う至って普通の高校一年生で、特別可愛くなければ特別スタイルが言い訳ではない。
家から学校まで5つも駅を乗り過ごさなければいけないのは大変だけど、まあ我慢できなくもない距離ではある。
今朝も当たり前のように満員電車の中をギュウギュウ押し進んで、窮屈なこの空間が早く過ぎることだけを待っていたのに…
太腿にあたる手が
私の全てを停止させた。
最初は思い過ごしだって言い聞かせたけどコレ…間違いない、痴漢だ。
そう頭の中で認識した途端ゾッとした。
まさか自分が痴漢される日がくるなんて夢にも思ってなかったから、予想外過ぎて対処の仕方が分からずにいた。
強張る身体を面白がるようにスカートが揺れる。
ドクン、ドクン。
…ぁ、ど、どうしよ、どうしよ。
ギュッと手すりを掴む力を強めたとき
バッ
「!」
「次の駅で降りてください」
「な、なんだよ、?!」
身体の力がふわっと抜けた。