淡色ドロップス
わたしの存在に気がついた大学生は一瞬ビックリしたような顔をする。
「学校大丈夫?」
「ぇ、…あっ」
そうだ、わたし学校…!
慌てて時計を見ると時刻は7時56分。
LINEを開いて友達のカナに「遅刻する」とだけ送り再び携帯をスクバの中にしまう。
「だ、大丈夫ですっ」
そう言って大学生の後を追うと、駅の事務所内へと通された。
ビクッ
先に椅子に座っていたサラリーマンを見たら自分がされたことを思い出し、嫌でも顔が暗くなる。
「話せる?」
駅員のお兄さんにそう問いかけられわたしは力なく頷く。
そうして、たどたどしくも自分がされた行為をなるべく事細かに話した。
「冷たい金属製のものが太腿に触れて…ビクッて、しました…」
駅員のお兄さんがサラリーマンの腕を捲ると、シルバーの高そうな腕時計が露わになる。
「ち、こ、こんなのデタラメに決まってる! 他のやつらだって付けてたかもしれねーだろ!!」
焦りを含んだ怒鳴り声に肩が震えた。