淡色ドロップス





ドキドキ。

まだ胸が騒がしい。


サラリーマンが大学生を殴ったのを見たからっていうのもあるけど…

殴られた本人が何とも思ってないようにサラリーマンを見据えていたあの表情が頭から離れない。


「大丈夫です」

「でも頬…」


痛々しい頬の傷を見つめると「ああ、」と言って細長い指でそれを触る大学生。


ドキン…


ドキン…



「消毒しとけば治ります。
それより学校、急いだ方がいいよ。
もうとっくに始まってるから」


ドキン…


「…ぁ、それこそ大丈夫です…」


やだ、まだ話してたい。


「こんなこと言う筋合いないけど、丈短すぎると思います。2度とああいう目にあいたくないなら、もう少し…

「?」


そこまで言って「やってしまった」という顔で黙る大学生。今度は胸がきゅううとすぼまった。


「や、なんでもないです」

「えっ、なんでですかっ」

「今の高校生ってすぐセクハラ扱いするから迂闊なこと言えないなと思って」



なにそのオジさん発言。

可愛いカワイイかわいい。

心の中でバタバタと悶える。







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