片恋の君
私はうんともすんとも言えないでいると。
「香織ー、いくよ!?」
中山さんは友達に呼ばれて、
「お願いね!」
と、私の返事なんてお構いなしに去っていった。
「はぁ…」
本当、私はダメな人間だな。
嫌とも言えないし。
ん…。
嫌とか思うのはおかしいか。
祐介はただの幼馴染。
それ以上でもそれ以下でもない。
いつも一緒にいるんだから、意識なんてしたことないもの。
「ナツ…、話終わった?」
「あ、うん…」
中山さんが遠ざかったあたりで、祐介が私に声をかけてきた。
なんも知らない祐介はのんきにあくびをしながら。
そんな祐介の顔を見てたら、ますますモヤモヤが募る。
今まで私の知る限りでは彼女なんていたことのない祐介が、もしも中山さんに告白されたらどうするんだろうか。
さすがに、あんな可愛い子に言われたら付き合うのかな?
ーーチクリ…
「ん…?」
今まで感じたことない痛みが胸に走る。
「どうした?」
「え。ううん!なんでもない」
それは一瞬にして収まったから私は気のせいだと思うことにした。