片恋の君




「祐介さ、彼女欲しいとか思わないの?」


「はっ!?いきなりどした?」



帰り道、誰もいないのを確認し、それとなく聞いてみた。

私の突然の質問に祐介は驚いている。

それもそうだろう。

いくら幼馴染で付き合いが長くても、私達の間でそんな話をしたことなんてないんだから。


「……ナツは?」

「え、…」


「ナツは欲しいと思ったことないの?」


「わたしは…」


そうゆうのは無縁だと思う。

恋とか、そうゆう感覚がよく分からないし。

中学3年生にもなって初恋もまだとか、少し恥ずかしいくらいに無頓着。


「…わ、わたしの話じゃなくて、今は祐介に聞いてるんだけど」


ハハッと少し乾いた声が漏れる。


きっと、祐介のことだから何人か好きな相手がいたとしてもおかしくない。


一緒に育ってきたのに、そう思うと祐介が少しだけ遠く感じる。




「俺は、付き合いたいよ…」




ーードキ…



さっきまでお互いに前を見て歩いていたのに、祐介と視線が交わった。


その瞳はあまりにの真っ直ぐで、私の知らない顔をしているような気がした。


目の前にいる祐介は、いつもふざけてる祐介とは違う、他の祐介。


きっと、もしかした、祐介は恋をしているの?



誰にーー?






「あのさ、ナツ…俺、」




「な、中山さんが祐介のことが好きって!!」



「え……」




「あ、」





重い空気に耐えられずに、中山さんの話題を出してしまった。



「…なんで、そんなことお前が言うの?」


「こないだ、中山さんに頼まれて


祐介との仲を取り持って欲しいて」



「違う。俺が言いたいのは、そうゆうことじゃない」


じゃあ、どうゆうこと?


キュッと唇を噛んだ。



「誰がどうとか、そんな言葉、ナツの口から聞きたくなかった」


「ごめ、あのね、祐介は」


ごめんね…

その続きが出てこない。


なんて言えばいいのかなんて、分かるわけもなくて。


ただ、モヤモヤが広がって行くだけ。


私の心をそのモヤモヤが支配する。







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