片恋の君
「ナツは、気にしなくていいよ
俺が、勝手に思い込んでただけだから。」
力なく笑う祐介。
そんな顔をさせたのは私だ。
「もういいや。お前は大事な幼馴染だ」
「待っ」
私の前からいなくなる祐介の手を引っ張ったが、それも虚しくほどかれてしまった。
初めて…祐介に拒絶されたと思う。
それくらい、彼は穏やかな人だったと思う。
私、祐介のなにを見てきたんだろう。
あんな風に言わせてしまうくらいに、きっと中山さんのことを言われたくなかったのだろう。
祐介の背を見ながら、ポロポロと流れ落ちる涙はどんなに拭ってもこぼれていく。
“俺が、勝手に思い込んでただけだから”
なにを思っていたんだろう。
それは考えてと考えても出ない答えで。
祐介はその答えをきっと教えてはくれない。
私も、その言葉を聞く勇気もなかった。
きっと、もう二度と聞けないのかもしれない。
ねぇ、もう一度やり直せるならば
その答えを私は知る権利があるのだろうか。