片恋の君




「ナツは、気にしなくていいよ

俺が、勝手に思い込んでただけだから。」


力なく笑う祐介。

そんな顔をさせたのは私だ。


「もういいや。お前は大事な幼馴染だ」





「待っ」


私の前からいなくなる祐介の手を引っ張ったが、それも虚しくほどかれてしまった。


初めて…祐介に拒絶されたと思う。


それくらい、彼は穏やかな人だったと思う。


私、祐介のなにを見てきたんだろう。

あんな風に言わせてしまうくらいに、きっと中山さんのことを言われたくなかったのだろう。



祐介の背を見ながら、ポロポロと流れ落ちる涙はどんなに拭ってもこぼれていく。


“俺が、勝手に思い込んでただけだから”


なにを思っていたんだろう。

それは考えてと考えても出ない答えで。


祐介はその答えをきっと教えてはくれない。



私も、その言葉を聞く勇気もなかった。







きっと、もう二度と聞けないのかもしれない。




ねぇ、もう一度やり直せるならば


その答えを私は知る権利があるのだろうか。










< 5 / 7 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop