片恋の君







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「香取さん、一緒にお昼食べない?」


「あ、えと…」


「あ、私は佐々木 芹(ササキ セリ)
みんなからはセリて呼ばれてるから、セリでいいよ!」

「あ、私は香取 夏耶(カトリ カヤ)
みんなには、カヤって呼ばれてたよ」


彼を除いて。


夏の字を小学校に上がったばかりの祐介は気にいっていた。


私らしくて、ピッタリだって。


それから、ナツって呼んでいる。


だけど、それはもう叶わないのかもしれない。




ーードン


「あ、ごめんなさい!」


「いや、こっちこそ……」



あ……。


「祐介ーー、なにやってんだよ、行くぞ!」

「おー、悪りぃ」


まるで、初めから無かったかのように。

その関係は、消えた。



あの日から。



「あれってさ、隣のクラスの噂の人じゃない?」


「噂?」


「そう。成績トップで顔がいいし、おまけにバスケ部期待のホープてね」


「そなんだ。」



「夏耶、もしかして、知り合い?」



私達のなんらかの空気を察したのか芹が聞いてきた。


知り合い。

もしかしたら、その言葉が今はちょうどいいのかもしれない。



あの日を最後に私達は話すことがなくなった。


まるであてつけかのように、祐介は中山さんをこっぴどく振ったらしい。


私を避けるようになった。


卒業式の日に一度だけ、私に用があってきた祐介と少しだけ会話をした。


それが、今でも胸にささっている。




ナツ…


そう呼んでいた口から


香取さん。


に変わっていたからだ。





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