あの日、言いたかったこと。
「みんなは気にしてるみたいだけどさ、俺は気にしない。
だって、日向は日向だし。
桜井とか新堂さんとかと何があったか知らないけど、それはきっと日向が話してくれるまで聞くべきじゃないと思うし。
俺は今の日向はすげぇ良いヤツだと思ってるし。
宿題見せてくれるし、あ、あとレポートも。
あとはー……えっと……」
うーん……と悩みだす健太。
俺はそんな健太を見て思わず笑ってしまった。
「それだけかよ」
「あ!あと、去年は見ず知らずの俺に教科書貸してくれた!」
あー……あったな、そんなこと。
「あれは貸したっていうより、お前が強引にかっさらっていったんだろ」
「あり?そーだっけ?」
そうだよ。
俺、しばらくお前のこと教科書泥棒って呼んでたし。
「いやー、でもあの時は本当に助かったなー」
まったく、コイツは……。
変わらない、何も。
それが何よりありがたかった。
「……ありがとな」
きこえるか分からない程の小さな声で、そう言った。
だけど、健太は少しだけ嬉しそうに口角を上げた気がした。