あの日、言いたかったこと。
「さ、どうぞ」
おじさんは二つのカップをテーブルに並べた。
紅茶がカップの中で静かに揺れている。
「あ……ありがとうございます……」
「あぁ、いいよ、敬語なんて。
昔は使ってなかっただろ」
「でも……」
そういうわけには……
チラリと悠斗を見ると、悠斗は必死に震える手を押さえていた。
「悠斗君……本当に大丈夫かい?」
「っ……だ……大丈夫です……」
おじさんは本気で悠斗のことを心配している……。
「……悠斗、お前本当にどうしたんだよ……」
俺が小声でそう言うと、悠斗は苦しそうに顔を歪めた。
「っ………どうして……」
「え……?」
「っ……どうして……おじさんは俺達に優しくするんですかっ……」
ようやく絞り出した悠斗の声はとても弱々しかった……。
おじさんは少し驚いたように悠斗を見た。
俺は……心臓をバクバクさせながらおじさんの答えを待った。