あの日、言いたかったこと。

「でも、私に会ったら光輝のことを思い出してしまうかもしれない。
あの辛い出来事を……思い出してしまうかもしれない。
そう思ったらなかなか会いに行くことができなくてね……。
でも、どうしても君達のことが気になって……せめて姿だけでも見ようと思って、君達が所属していたサッカークラブまで行ったんだ」


そういえば……監督が言ってたな。

俺達がやめた後、おじさんが来てたって……。

俺達を見るために……わざわざ……?


「だけど、君達はすでにやめてしまった後で……姿を見ることすらできなかった。
何でサッカーをやめてしまったんだろう……って、気になってたんだよ。
そんな時、あの子に会ったんだ。
何て言ったっけな……あぁ、そうだ。
杏ちゃんだ」


杏……。


「杏ちゃんなら君達がサッカーをやめた理由を知ってるかもしれない。
そう思って、聞いてみたんだ。
最初はなかなか答えてくれなかったよ。
……でも、何回か質問をしてる内に……杏ちゃんは急に泣き出して、自分が見てきたことを全部話してくれたんだ」


杏が見てきたこと……全部……。


杏は知っていた。

あの練習試合で何があったか。

そして、その後の俺達の関係も、


全部ってことは……それはつまり……


「君達には……本当にすまないことをしたね」


何で……何でおじさんが謝るんだよ……。

本当に謝らなきゃいけないのは俺達なのに……

何で声が出ないんだよ……!

< 120 / 133 >

この作品をシェア

pagetop