あの日、言いたかったこと。
「でも、私に会ったら光輝のことを思い出してしまうかもしれない。
あの辛い出来事を……思い出してしまうかもしれない。
そう思ったらなかなか会いに行くことができなくてね……。
でも、どうしても君達のことが気になって……せめて姿だけでも見ようと思って、君達が所属していたサッカークラブまで行ったんだ」
そういえば……監督が言ってたな。
俺達がやめた後、おじさんが来てたって……。
俺達を見るために……わざわざ……?
「だけど、君達はすでにやめてしまった後で……姿を見ることすらできなかった。
何でサッカーをやめてしまったんだろう……って、気になってたんだよ。
そんな時、あの子に会ったんだ。
何て言ったっけな……あぁ、そうだ。
杏ちゃんだ」
杏……。
「杏ちゃんなら君達がサッカーをやめた理由を知ってるかもしれない。
そう思って、聞いてみたんだ。
最初はなかなか答えてくれなかったよ。
……でも、何回か質問をしてる内に……杏ちゃんは急に泣き出して、自分が見てきたことを全部話してくれたんだ」
杏が見てきたこと……全部……。
杏は知っていた。
あの練習試合で何があったか。
そして、その後の俺達の関係も、
全部ってことは……それはつまり……
「君達には……本当にすまないことをしたね」
何で……何でおじさんが謝るんだよ……。
本当に謝らなきゃいけないのは俺達なのに……
何で声が出ないんだよ……!