あの日、言いたかったこと。

「妻の死から君達の様子がおかしくなったって……。
あの練習試合のことを気にしてるって……そう聞いてね。
でも、君達が罪悪感を感じる必要なんてない。
君達は何も悪くないんだ」


おじさんは俺達に言い聞かせるようにゆっくりとした口調でそう言った。


「けどっ………」

「妻は喜んでいたよ。
試合で活躍する君達を見て」


え……?

俺達を……?

何で……。


固まった俺達を見ながらおじさんは優しい声で俺達に語りかけた。


「普通なら息子の活躍する姿を見たがるかもしれないね。
でも、違うんだ。
光輝が活躍してるかどうかなんて関係ないんだ。
あの子がみんなで楽しくプレーしてる姿を見れただけで、妻は満足だったんだよ」


確かにそれも重要かもしれないけど……

でも、やっぱり……


「それにね、光輝は試合の前日にずっとこう言ってたんだ。
“ヒナとユウは本当にすごいから、絶対見て!”……って」

「え………」

「本当にずっとそう言ってたんだよ。
だから、聞いたんだ。
“光輝はどうなんだ?“って。
そしたら光輝、“俺も活躍したいけど……。でも、本当に二人はすごいんだよ!”って……それはもう嬉しそうに」


光輝が……?

俺達のことを……?

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