あの日、言いたかったこと。
久しぶりにその名前を口にすると、レジにいた若い女は嬉しそうに笑った。
「やっぱりヒナ君だ!
うわー……久しぶりだね!」
「お前……九州にいたんじゃ……」
「また戻ってきたんだ。
お父さんの転勤で。
9月からはこの辺の高校に通うんだよ」
新堂杏奈……通称、杏。
悠斗とかと同じく、幼稚園からの幼なじみ。
だが、俺達の間で事件が起こってすぐに杏は父親の仕事の都合で引っ越した。
それから7、8年近く連絡すらしてなかった。
そうか、戻ってきてたのか……。