あの日、言いたかったこと。

「……日向。
俺さ……決めたんだ」

「え……?」

「今年は……今年こそは行くよ。
……アイツの墓参り」


悠斗……。


「……悠斗は……強いな」

「……強くねぇよ。
俺なんか……っ……!!」


悠斗は突然顔を歪ませて目元を押さえた。


「……悠斗?」

「……何でもねぇ。
俺……帰るわ」

「あ、おい……」


悠斗は飲み終わったペットボトルをゴミ箱に乱暴に入れると、そそくさと歩いていってしまった。


何だ……?

アイツ……。


少し不思議に思ったが、特に何をしようという気は起こらなかった。


俺もこれを飲み終わったら帰ろう。

そんな呑気なことを考えていた。


……俺が悠斗の本当の苦しみを知るのは……もう少し後のことだった。

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