あの日、言いたかったこと。

つまらない補習授業を終え、俺は即座に教室を出て昇降口で靴に履き替えた。


早く帰ろ。

んで、クーラーつけて寝る。


それが究極の幸せってもんだ。


あ、何か冷たい飲み物でも買って帰ろうかな……よし、そうしよう。


そうとなったらできるだけ早く帰って……


「補習か。
相変わらず数学苦手なんだな」


……嫌な声が聞こえた。

俺は立ち止まり、振り返るかどうか悩む。


この声は……間違いなくアイツだ。


「ま、丁度いいんじゃねぇの?
そうでもなきゃ外に出ないもんな、お前」

「んだよ……今日はヤケに絡んでくんのな。
いつもは俺のことなんて見向きもしねぇクセに」

「たまたま目が合ったからな」


少しだけ風が吹き、アイツの明るい栗色の髪が靡く。

やっぱ……窓の外なんか見なきゃよかった。

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