あの日、言いたかったこと。

あの事故で……何もかもが音を立てて崩れ去った。

大切な親友を失った。

そんな親友に恋をしていた一人の少女は苦しみを誰にも打ち明けられずに去った。

残された俺達は同じ苦しみを持っていながらお互いを避け始めた。


全ては……あのサッカーから始まった。


勝ちたい、誰もが持つその気持ちが……全てを壊してしまった。


親友の母の死で罪悪感を感じ、親友を避け、そのまま何も言えずに……親友はいなくなってしまった。


それでも昔と変わらず、俺は逃げ続けている。


自分が傷つかないために、必死に目をそらしている。


親友が命を賭けて俺を助けてくれたのに……俺はそんな自分可愛さに親友の死を忘れようとしていた。



「…………………」


とてもバイトを続けられる状態じゃなくて早退させた杏を家まで送り届けた後、俺はそんなことを考えていた。

そして……決めた。


「……悠斗」

「ん?」

「……俺も行くよ」

「は?」

「……光輝の墓参り。
……俺も行く」


悠斗は一瞬目を大きく見開いた。

でも、俺の真剣な顔を見てゆっくり微笑んだ。


「……あぁ」


今年こそは……もう、逃げない。

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