あの日、言いたかったこと。

「お前も来たのか」


俺がそう聞くと、悠斗はグラウンドの方を見たまま小さく頷いた。


「あぁ……。
だって、今日は……おばさんの命日だろ」


七年前の夏……。

息子の試合を観るためにここへやってきたおばさん。

そしてその二日後……亡くなった。


いつもの優しい笑顔で応援していたのに。

また、応援に来れると思っていたのに。


現実はいつも……残酷だ。


グラウンドでは……子供達がキラキラ笑顔を輝かせながらサッカーをしている。

楽しそうだ。

本当に……。


「……俺らも……昔はああだったのにな」


……悠斗が小さく呟いた。


「悠斗……?」


悠斗の拳は力強く握られ……小さく震えていた。


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