あの日、言いたかったこと。


「大好きだから……辛くても一緒にいれば大丈夫って思える……か」


あの時の杏の言葉を思い出し、ポツリと呟く。


「ん?日向、何?」

「あぁ、いや……何でもない」


杏は言った。

俺達のことを大切に想う気持ちは一生変わらないって。

はっきりと……俺達の目を見ながら。


『ヒナ君とユウ君にウザいって思われても、一生つきまとってやるんだから!』


最後に杏はそう冗談めかして言った。


それは杏の精一杯の強がりなのかもしれない。

杏は今でも……苦しんでいる。

だけど、強がってでもなければ押し潰されてしまう。


それほどまでに俺達の心の傷は……深くて、重い。

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