あの日、言いたかったこと。

もし、あの日に戻れるならば……。

光輝に言いたいことがある。

言わなければならないことがある。


でも……それはもう、叶わない。


「ヒナ君?」

「え?あ……」


急に黙りこんだ俺を杏が心配そうに見つめてきた。


……杏も、苦しんでるんだよな。

忘れられない……もうこの世にはいない人を想って。


「宮山」

「お、悠斗!
どうした?」


あ……悠斗。


悠斗が珍しくウチの教室にやってきた。


「悪いけど、今日も……」

「あー……分かった。
監督には俺から言っておくよ」

「悪いな……ありがとう」


……今日も行かねぇのかよ。

お前は何のために……

……何のためにサッカーやってんだよ。


「…………………」


……悠斗が俺の視線に気づき、動きを止める。


「……んだよ」


俺の目を見たままぶっきらぼうにそう言う。


「……お前、何隠してんだよ」


俺がそう聞くと、悠斗の顔が険しくなった。


学校では滅多に目にすることのない悠斗の表情を見て、はしゃいでいた周りが静かになった。

教室中、みんなこっちを見てる。

だけど、そんなの気にしてられない。

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