ソットボーチェ~あなたの声で~
「そんなに、声良かったの?」
「え?声…?あ、うん。全部もってかれたよね…」
「そっか」

西田くんは、枝豆を食べながらカレの声について聞いてきた。

“声”と言われてすぐに分かった、カレのこと。

ほんと、一瞬で全部もってかれたんだよね、あの時。

凌さんの声に似てたけど、こんなところに来るはずがない。

ただ、声が似てたってだけ。

顔だって、日本に自分と同じ顔の人が3人いるというのだから、声だって似てる人はいるんだ。

「待たせたな」
「あ、うん。ありがとう」

聖斗がカウンター越しに、ビールを出してくれた。

そだ、枝豆と焼き鳥頼まないと!

そう思い、口を開きかけたその時。

「こんばんは」

そう言って入ってきた、あの声に、わたしの体は動けなくなっていた。
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