社内恋愛のススメ
「どう?美味いか?」
自信たっぷりにそう聞いてこなければ、素直に答えられるのに。
美味しいよ。
ありがとうって、言えるのに。
癪に触るけど、美味しい。
男って、もっと料理が下手な生き物だと思っていた。
不器用な生き物だと思っていた。
これは、まずい。
もしかしたら、私よりも料理が上手いかもしれない。
「味はともかく、長友くんが料理出来るなんて………ちょっと意外。」
「料理も出来て、仕事も出来て………言うことないよな、俺!」
そんなに褒めたつもりなんてないのに、図に乗ってしまったらしい。
「あー、はいはい。ごちそう様でした!」
何口か口にしてから、私は憎まれ口を叩きながら、レンゲをお盆の上に戻した。
お粥を食べながら聞いたのは、長友くんがここにやって来ることになった経緯。
会社を飛び出した私の荷物を届ける為に、私のマンションまでやって来た長友くん。
何も言わずに、会社を飛び出してしまった私。
どう考えても怪しまれる私の行動を、長友くんはフォローしてくれていた。
「あぁ、有沢、朝から体調悪いって言ってましたよ。下痢でもしてるから、トイレに駆け込んだんじゃないですか?」
おい。
その言い訳は、どうなの?
急に飛び出した理由にはなりそうだけど、私はトイレに駆け込んだということになる。
しかも、下痢って。