社内恋愛のススメ



それから、長友くんはずっと傍にいてくれた。

いろんな話をしてくれた。


お粥を食べ終えて薬を飲んだ私が、眠りにつくまで。



「みんな、お前が下痢だって信じてるんだから、適当に話を合わせろよ?」

「どう、話を合わせろって言うのよ。」

「漏れちゃいそうだったんですって言っとけ。」

「………恥ずかしくて、もう会社に行けない!」

「バーカ!じゃあ、また会社でな。」


笑いながらそう言って、長友くんは帰っていった。


最後まで、何も聞かないでいてくれたんだ。



私と上条さんのこと、知っているのに。

私達の関係に気が付いているはずなのに。


それでも、何も聞かずにいてくれた。



「長友くん、ありがとう………。」


長友くんが消えていったドアに向かって呟いた、お礼の言葉。


面と向かってだと、きっと素直に言えないから。

照れ臭くて、言えなくなりそうだから。


長友くんのお陰で、ちょっとだけ冷静になれたよ。





いつまでも、逃げていられない。

上条さんのことが好きなら、彼から逃げてはいけないんだ。


逃げていたって、何の解決にもならない。



聞かなくちゃ。

聞かなければいけない。


文香さんのこと。

そして、私との未来のことを。



< 114 / 464 >

この作品をシェア

pagetop