社内恋愛のススメ
それから、長友くんはずっと傍にいてくれた。
いろんな話をしてくれた。
お粥を食べ終えて薬を飲んだ私が、眠りにつくまで。
「みんな、お前が下痢だって信じてるんだから、適当に話を合わせろよ?」
「どう、話を合わせろって言うのよ。」
「漏れちゃいそうだったんですって言っとけ。」
「………恥ずかしくて、もう会社に行けない!」
「バーカ!じゃあ、また会社でな。」
笑いながらそう言って、長友くんは帰っていった。
最後まで、何も聞かないでいてくれたんだ。
私と上条さんのこと、知っているのに。
私達の関係に気が付いているはずなのに。
それでも、何も聞かずにいてくれた。
「長友くん、ありがとう………。」
長友くんが消えていったドアに向かって呟いた、お礼の言葉。
面と向かってだと、きっと素直に言えないから。
照れ臭くて、言えなくなりそうだから。
長友くんのお陰で、ちょっとだけ冷静になれたよ。
いつまでも、逃げていられない。
上条さんのことが好きなら、彼から逃げてはいけないんだ。
逃げていたって、何の解決にもならない。
聞かなくちゃ。
聞かなければいけない。
文香さんのこと。
そして、私との未来のことを。