社内恋愛のススメ
「君が好きだ。」
ふいに落とされた、告白。
熱く語られた言葉に、涙腺が緩む。
面と向かって好きだと言われたことがあまりないからこそ、驚いた。
「………っ。」
「文香よりも、他の誰よりも、君のことを想っている。」
上条さんが必死に紡ぐ、愛の言葉。
でも、もうそれだけで十分。
その言葉が聞けただけで、私は十分だ。
これ以上、聞きたくない。
私を想っての言葉も、囁きも、私には必要ないのだ。
だって、私達は離れる。
今日という日を境に、別れなければならないのだから。
そんな言葉を聞いても、つらくなるだけ。
離れ難くなるだけだ。
私は涙を堪えて、上条さんの言葉を聞き流す。
聞き流したフリをする。
「私も、主任のことが好きでした。ずっとずっと、好きでした。………好きだから、あなたにとって1番いい未来を選びたい。」
本当は、ずっと隣にいたかった。
同じ道を歩いて、同じものを見ていたかった。
だけど、それはもう叶わない。
幸せになって。
幸せになって欲しい。
誰よりも恋焦がれた、憧れの人。
「さようなら、上条さん。私達、上司と部下に戻りましょう………。」
それが私が彼に突き付けた、別れの言葉。
大好きだった人への、最後の言葉だった。