社内恋愛のススメ
「な、長友………くん?」
顔を引き攣らせながら、そう問う。
鼻孔まで微かに届く、アルコールの匂い。
この匂いは、何?
気のせい?
気のせいだよね。
確かめたくて、長友くんに近付いて、よく匂いを嗅いでみる。
コンビニの駐車場で、スウェットの女が男の匂いを嗅いでいる。
部屋着のまま、前髪をちょんまげに結って。
他人から見たら、かなり滑稽な光景。
聞きたくない。
だけど、聞かずにはいられない。
答え次第では、こちらの対応を考えなければならないから。
「長友くん、もしかして………酔っ払ってる?」
恐る恐る、聞く私。
「当たりーーー!」
長友くんはいつもの明るい笑顔を咲かせ、元気良くそう答えてくれる。
その答えに私がイラッとしたのは、言うまでもない。
(この野郎………。)
人の至福の時間を、邪魔しやがって。
休みの日に、からかうつもりで電話しやがって。
冗談じゃない。
スウェットのまま、着替えもせずに駆け付けたのだ。
長友くんのことが心配で、その思いだけでここまで走ってきたのに。
何だ、これ。
何なの、この結末。
感じた苛立ちを、そのまま直球で長友くんに投げ付けてやった。
「ねぇ、長友くん………。」
「ん?ぷっ、くくく………っ!」
「どうして、笑うの?」