社内恋愛のススメ
「主任とお話するべきことは、もう話してあります。私には、お話することは何もありません。」
こんなこと、言いたくない。
出来るなら、この人にだけは言いたくなかった。
ずっとずっと好きだった人。
望んで別れたんじゃない。
そうしなければならない理由があったから、仕方なく別れたのだ。
文香さんとのことがなかったら、今もきっと一緒にいたはずの人。
私の隣で笑って。
同じ時間を過ごして。
もしかしたら、同じ未来を歩いていたかもしれない。
だけど、それはあくまで想像だけの話。
もしかしたらは、もしかしたらでしかない。
終わったんだ。
私と上条さんは、もう終わってしまったんだ。
「まだ認めてない。」
「!」
「君と別れることを承諾した記憶は、僕にはない!」
上条さんの紡ぐ言葉が、虚しく響いて。
私の心に、確かに刻み込まれていく。
「もう終わったんです。上条さんが………主任が婚約するって聞いた時に、私の心は決まったんです!」
熱く語る、上条さん。
それとは対照的に、どんどん醒めていく私。
あの気持ちは、嘘じゃない。
入社した頃から、私はずっと上条さんのことを見ていた。
上条さんのことだけを見つめていた。
上条さんがたまにくれる優しい言葉は、私の支えだった。
慣れない仕事で戸惑う私を、上条さんがそっと支えてくれていたのだ。
上条さんが本社に戻ってきた時は、死ぬほど嬉しかったんだよ。