社内恋愛のススメ



恋しい。

悔しい。

悲しい。


どれが、本当の自分の気持ちなのだろう。



きっと、今でも恋しいと思う気持ちはある。

幸せだった頃の気持ちにはほど遠くても、まだ私の中にわずかに残る恋しさ。


でも、それ以上に悔しくて。

悲しくて。



きっぱり割りきれない自分がいることが、悔しい。

思い出まで汚されていくことが悲しい。


きっと、どれも本当の私の気持ちなんだ。



上条さんが何かを言いかけようとしていた、その時。

私と上条さんの間に、突然大きな壁が現れた。






「何、してるんですか?」


少し上から降ってくる声が、私を落ち着かせてくれる。



ついさっきまで、肩を並べて仕事をしていた人。

私の隣で仕事をしていた人が、目の前にいる。


私と上条さんを隔てる様にして立つ、その人。

私は、その人の名前を口にした。



「な、長友………くん………。」


ふいに聞こえてきたその声に合わせて顔を上げれば、見えたのはダークブラウンの髪。

短い髪が、私の視界に広がる。


ジャケットを脱いでいるせいで、目の前に見えているのは真っ白なシャツだけ。



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