社内恋愛のススメ
「だって、お前、その格好………。スウェットにちょんまげって、いくら何でも女捨て過ぎだろ!」
クスクス笑いながら、長友くんがそう言う。
私を指差して、目には涙を溜めて。
そりゃ、面白いよね。
自分でも、そう思う。
こんなだらけた格好で外に出るヤツなんて、滅多にいないだろう。
でもね、私は必死だったんだよ。
長友くんに何かあったら、どうしようって………。
長友くんのことが心配で心配で堪らなくて、急いで来たのに。
プチッと、堪忍袋の緒が切れる音がした。
「こら、長友!」
許さない。
この恨みは、そう簡単には消えない。
「あんたは、休みの日に人を呼び出しておいて………お仕置きしてやるんだから!!」
大きな声でそう叫び、長友くんに向かって蹴りを入れる。
助走を付けて、軽くジャンプをしながら。
私の足が綺麗に、長友くんの体に真っ直ぐに伸びていく。
ほぼ素面の私と、完全なる酔っ払いの長友くん。
動きの差は、明らかだ。
私の飛び蹴りが、スッと決まった。
「いってぇ!!」
「当然でしょ。」
「怒んなよ、有沢………。からかっただけじゃん。」
いつもの調子で長友くんがそう言うものだから、憎らしい。