社内恋愛のススメ



揚げたての唐揚げに、ちょこんとネギが乗った冷奴。

緑が鮮やかな枝豆。

それに、こんがりといい焼き色が付いたホッケ。


どれもこれも、よだれが出そうなくらいに美味しそう。

私のお腹の虫も、さすがにこれだけのメニューを前に騒ぎ始める。



そういえば、お昼ご飯を食べたきり。

他には、何も口にしていない。


この時間になれば、長友くんじゃなくてもお腹が空いてしまう。



酒のつまみが並ぶ中、長友くんの目の前に鎮座する大盛り炒飯。


長友くんの今日の主食は、炒飯。

大盛りという所が、男らしい。



「うわっ、ヤバい………めっちゃ美味い!」


ガツガツと炒飯を掻き込むその姿には、さすがにときめきはしなかった。




「………。」


長友くんにときめくとか、有り得ないよね。


うん。

やっぱり、気のせいだ。


そうに違いない。

もしくは、気の迷い。



だって、私、失恋したばかりだし。


別れたばかりだから、ちょっとだけ人恋しくて。

寂しくて。


だから、こんな風に過剰に反応してしまうんだ。



私だって、一応、女。

生物学上も、中身も女だ。


男っぽいとかマイペースとか言われても、根本にあるのは女としての自分。


女々しくはなりたくない。

でも、全く寂しくないと言ったら、それは嘘になる。



後ろを振り返らないと、そう決めた。


振り返っても、仕方ない。

振り返るくらいなら、前を向いていたい。



しかし、心にぽっかり空いてしまった穴は、簡単には埋まってくれないのだ。



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