社内恋愛のススメ
上条さんへの想いが完全に消えた訳じゃない今は、その穴を埋めたくてしょうがない。
だから、開いた穴を塞ぎたくて、無意識に誰かを求めてるんだ。
誰か。
それは、きっと誰でもいい。
たまに感じるこのドキドキは、錯覚なんだ。
ね、そうだよね。
(私、そんなに軽い気持ちで、上条さんのこと………好きだった訳じゃない。)
気のせいだよ。
この気持ちは、きっと気のせい。
勘違い。
必死にそう思い込もうとしている自分に気が付いて、ちょっとだけ笑ってしまった。
長友くんと、いろんな話をした。
「部長、俺のこと、パシリだと思ってない?」
「んー、そう?」
「絶対そう!だって、何かあると、すぐ俺のこと呼ぶんだもん。」
「………部長に愛されてるんじゃない?」
「嫌だ………。どうせなら、あんな宴会親父じゃなくて、綺麗な女の人に愛されたい!」
仕事の話。
「最近さぁ、無性に甘いもん食べたくなるんだよな。」
「長友くんって、甘い物食べられる人?」
「あ、全然いける。甘いもん、結構好きだし。」
「………女みたい。」
「おい、こら!何か言ったか?」
「いいえ、別に!」
「あー、チョコのケーキ食いてぇ!!ハマってるんだよ。」
最近、ハマってる物の話。
「こないだ、地元の友達が遊びに来ててさ。久しぶりに飲みに行ったんだ。」
「まさか、人様に迷惑かけてないでしょうね?」
「俺が、そんなことする訳ないだろ。ただ、ちょっと酔っ払って………公園の噴水で水浴びしただけで。」
「うーわ、何やってんの!?」
友達の話。
くだらない話で、私を笑わせてくれた。