社内恋愛のススメ
久しぶりに、笑顔になれた。
心から笑えた。
2人きりになっても緊張しないのは、相手が長友くんだから。
入社以来、ずっと隣で仕事をしてきた、長友くんだから。
上条さん相手なら、私はもっとガチガチに緊張してしまうだろう。
気を抜ける、この距離感がちょうどいい。
男を感じない、この距離がいいんだ。
長友くんと話して改めて知ったのは、お互いに特定の相手がいないこと。
「なー、有沢。」
「ん?」
「有沢は、新しい男、作んないの?お前、上条主任と別れたんだろ?」
ほろ酔いの長友くんが、そう聞く。
素面じゃ聞かないその問いは、酒に酔っているからこそ聞いたことなのかもしれない。
ほんのり赤く染まった頬。
微かに潤んだ目。
その変化は、長友くんを実年齢よりも幼く見せる。
私は素っ気なく、こう答えた。
「新しい男………か。」
新しい男。
上条さんを忘れて、別の人と付き合う。
いつか訪れるであろうその日を、頭に思い浮かべる。
しかし、頭の中は真っ白なまま。
何も思い浮かべられない。
「当分、作る気ないかな。仕事が忙しくて、そんな暇もないし。」
強がりじゃない。
これは、本音。
上条さんと別れたばかりの今は、新しい相手を探し求める気にはどうしてもなれない。