社内恋愛のススメ



新しいプロジェクトが始まりつつある今は、寝る間も惜しいほどに仕事漬けの毎日を送っている私。

正直に言えば、そんなことをしている余裕はない。


そんな暇があるから、寝たい。

休日出勤だって、ザラにあるのだ。


珍しく、今週末だけは、仕事で休みが潰れることはないみたいだけど。



「長友くんは………知ってたんだね。」

「何が?」


呟く様に言った、一言。

長友くんが、 短く聞き返す。


気まずさから、フッと長友くんから視線を逸らした。



「………上条さんとのこと。」


普段は、こんな風に聞いてこない。

私のプライベートに、長友くんが深く首を突っ込んでくることは滅多にない。


だから、分からないんだ。



長友くんが、どこまで知っているのか。

どこまで気付いているのかを。


気まずい雰囲気を気にする様子もなく、長友くんは素知らぬ顔でビールを口の中へと流し込む。

一気にビールを飲み干した長友くんは、つまみの唐揚げをポーンと口に放り込んでから、こう答えた。



「付き合ってたこと?それとも、別れたこと?」


ニヤリと笑いながら、さも面白そうにそう尋ねる長友くん。



バレていることは分かっていた。

何かしらに勘付いていることは分かっていた。


でも、こういう風に聞かれるのは腹が立つ。


からかわれているみたいだ。

そう思うと、何だか悔しい。



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