社内恋愛のススメ



「うっ………」

「お前は否定してたけど、主任と付き合ってるんだろうなとは思ってたし。別れたのも、何となく気付いてたよ。」


あぁ、やっぱり。

隠し事が上手い性分じゃないとは分かっていたけれど、こうも簡単に見破られるなんて。


そんなに分かりやすかったのだろうか。



上条さんと付き合えて、舞い上がっていて。

浮かれているのは、他人から見ても気付いてしまうほどだったのだろうか。


情けない。

本当に情けない。


(あんなに必死に、上条さんとのことを隠そうとして頑張ってたのにな………。)


私とのことが、上条さんの迷惑にならない様に。

上条さんのことだけを考えて、あの頃の私は懸命に隠してた。


その努力さえ、今となっては懐かしいものだけれど。



「1人の方が気楽だし。別にいいもん。」


そう。

1人の方が、ずっと気楽。


悩まなくていい。



誰かのことだけを考えて。

気を遣って。


傷付いて。

傷付けられて。



そういうのは、もう当分いらない。


ちょっとだけ、疲れてしまった。

そういうことに疲れてしまったのだ。



「それより、そっちはどうなの?」


話の矛先を変えたくて、長友くんに話を振ってみる。


まさか、自分に話の矛先が向けられるとは思っていなかったのだろう。

話を振った途端、長友くんの顔色が一瞬にして変わってしまった。



「………っ。」


長友くんの顔が、茹でタコみたいに真っ赤に染まっていく。


これは、お酒だけの影響ではないはず。

耳まで赤くなる長友くんに、私は立て続けにこう聞いた。



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