社内恋愛のススメ
「結婚したいんでしょ?彼女に、そう言ってみればいいじゃん。」
「は?」
「プロポーズ、しちゃえば?」
クスクスと笑いながらそう言えば、長友くんは機嫌が悪そうにそっぽを向く。
形勢逆転。
そんな顔しても、怖くないから。
真っ赤な顔をして睨まれたって、怯えたりしない。
ただ、ちょっとだけ………複雑だ。
長友くんに、そんな顔をさせてしまう人。
長友くんを、そこまで夢中にさせてしまう人。
それって、どんな人なんだろう。
文香さんみたいな、清楚な人かな?
それとも、大人っぽくて色気がある人かな?
まぁ、間違っても、私は長友くんのタイプではないはず。
もうそうなら、もうとっくの昔に口説かれているだろう。
長友くんに口説かれたことなんて、今まで1度もない。
そう思ったら、また違和感。
ズキンと、心臓が鋭い痛みを伴って痛んだ。
「あのなぁ、からかうなよ。」
ふて腐れた長友くんが、メニューで顔を隠しつつ、そう返す。
照れ隠し。
それが、はっきり分かる仕草。
いつもと違う反応を見せる長友くんは、ちょっとだけ可愛らしい。
だけど。
だけど。
だけど、何かムカつく。
理由なんか、分からない。
知らない。
でも、ムカつくのだ。
可愛らしいと思う反面、そんな長友くんに腹が立っている。