社内恋愛のススメ



嬉しかった。

長友くんが来てくれたこと。


だけど、迷惑はかけられない。

かけちゃいけないと思った。


私と上条さんとのことは、長友くんには関係ないから。

関係のないことだから。



上条さんを振り切って、長友くんを会社から連れ出して。

迷惑をかけてしまった長友くんを、お礼代わりに飲みに誘った。



しかし、はっきり覚えているのはそこまで。


居酒屋で、長友くんと飲んでいたことだけ。

珍しく、お互いに恋愛の話なんかして。



(あれ?その後………どうしたんだっけ?)


長友くんと話したことさえ、今の私にはおぼろげにしか思い出せない。


覚えているのは、切なかったこと。

ほろ苦い思いをした様な気がすること。



(どうやって帰ってきたんだろう、私………。)


ダメだ。

全然覚えてない。


歩いて帰ってきたのだろうか。

それとも、タクシーを使って帰ってきたのだろうか。



とりあえず、途中で倒れて、野宿をしなかったことだけは確からしい。


ほら、その証拠に、布団にくるまっている自分。

フカフカの布団が、二日酔いでまだフラフラしている私を包んでくれている。



フカフカの布団は温かくて、肌触りがいい。


いつまでも、こうしていたくなる。

こうしているだけで、蕩けてしまいそう。


目を開けることなく、まどろむ私。



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