社内恋愛のススメ



だって。

だって、長友くんの顔が、目の前にあるんだもん。


ほんの少し動いてしまえば、触れてしまいそうなほどに近い位置。

お互いの呼吸さえも、分かってしまう位置。


そんな距離に、長友くんがいるのだ。



同じベッドの中。

同じ布団の中に。


焦りが全面に出る中、起き上がって見下ろした長友くんの姿。



私の蹴りに悶絶して、ベッドから転がり落ちる男が1人。

そこで、ようやく目が覚めた様だった。



「いってぇ!何すんだよ!!」

「あ、あ、あ、あんたが………あんたが変なことするからでしょ!?」


私がそう言えば、ふて腐れた長友くんがそっぽを向く。



「朝っぱらから、大きい声出すなよ。………頭に響くだろ。」


頭を抱えながら、長友くんがそう呟く。



寝起きの長友くん。

初めて見る、長友くんの寝起き。


短い髪が、カーテンから漏れる光に透かされてキラキラ光ってる。


どこから入ってきたのか。

カーテンが揺れる。



ユラユラ。

キラキラ。


その様は、何故か綺麗に映って。


ダークブラウンの髪は、寝癖でピョンピョン跳ねていた。



「んー、もう朝………?」

「そうみたいだけど。」

「今日って、確か土曜日だろ?俺、まだ眠いんだけど。」


長友くんはそう言って、再び布団の中に潜り込もうとする。



眠いのは分かる。


私だって、まだ眠い。

こんな状況でなければ、長友くんと同じことをしてるはず。



でも、寝ていられない。

大人しく寝ていられない。


聞かなければならないことがある。

聞いておかなければならないことがある。


布団に潜り込もうとする長友くんを無理矢理引きずり出し、私は矢継ぎ早に質問を浴びせた。


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