社内恋愛のススメ



「ね、ねぇ、ここはどこ?な、な、何で、私………ここで寝てるの?居酒屋で飲んでなかった?」


矢継ぎ早に浴びせた質問。

その質問に、長友くんが欠伸をしながら体を怠そうに起こす。


面倒臭い。

そう言いたげに、長友くんはこう聞き返した。



「はぁ?何、言ってんの?」

「………いや、だから、その………」

「居酒屋で飲んだ後、うちで飲み直すって決まったじゃん。」


呆れて聞く長友くんに、私は言葉を濁らせる。



居酒屋で飲んだ後。


その後の記憶は、一切ない。

綺麗さっぱり、私の中から消え去っている。



「まさか、覚えてないの?」

「えっと、その………」

「記憶、ないの?」


はい、その通りです。

ごめんなさい。


私は、コクンと頷く。


顔の前で両手を合わせて、私は長友くんに平謝りするしかない。



「ごめん、全然覚えてない………。」


私のその答えを聞いて、長友くんはベッドの上でガックリと肩を落とした。



呆れられてしまったかな。

そうだよね。


27歳にもなって、飲んで潰れて、記憶をなくして。



ダメ人間だ。

ダメな大人の代表だ。


どうしようもない。


救いなのは、隣にいたのが知らない人ではないということだけ。



「ここ、どこ?」

「ここは、俺のマンション!昨日、ここで飲んでて、有沢はそのまま寝ちゃったんだよ。」


長友くんが呆れ顔で教えてくれたのは、居酒屋を出てからの詳細。



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