社内恋愛のススメ



そうは言っても、私は一切覚えていない。

従って、そう言われても、それが真実なのかどうかさえ分からないのだ。



長友くんは、こんな嘘はつかない。

少なくとも、私の前では。


からかう為の冗談混じりの分かりやすい嘘はあっても、こんなことをわざわざ作り話として話す理由は、長友くんにはない。



だから、きっとその通りなんだ。


長友くんの言葉の通りなのだろう。



(酔っ払って、そのまま寝ちゃって………。)


あーあ、スーツ、シワになっちゃってるよ。

クリーニングに出さなくちゃ、また着れないじゃないか。



いやいや、待って。

スーツの心配なんかしてる場合じゃない。


そんなことよりも、もっと大切なことを見落としてる。

もっと重要なことがある。



2人きり。

男と女。


しかも、子供じゃない。

大人の男と、大人の女。


都合良く、ベッドがある部屋。

ポワンと、恥ずかしい絵が頭に浮かぶ。



(まさか………それはないよね。)


うんうん。

ないない。

絶対ない。


いくら酔っ払っていたとしても、有り得ないよね。

思い浮かべてしまった絵を消したくて、二日酔いの頭をブンブン振る。



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