社内恋愛のススメ
長友くんの手。
大きくて、少しゴツゴツした手。
壊れ物でも扱うかの様に、私に触れる手。
発熱する体。
真っ赤な頬。
沸騰しそうな脳。
そのどれもが、いつもとは違うこの状況に戸惑ってる。
それなのに、嫌じゃない。
嫌だと思えないのは、何故だろう。
突き飛ばしてしまえればいいのに、それが出来ないのは何故だろう。
いつもならば笑ってそれが出来るはずなのに、今だけはどうしても出来ない。
触れて。
もっともっと、このままでいたい。
そう思ってしまった瞬間に、私の心音は更にその速さを増していく。
ああ、おかしい。
最近、ほんとに心臓の調子が変だ。
固まってしまった私を見て、長友くんが苦笑いをした。
「ぷっ………、くく………っ。」
「な、何よ?」
「冗談だって。」
長友くんの手が離れていく。
名残惜しそうに、ゆっくりと。
ゆっくりと離れていくその手を見て、寂しさが募る。
「バーカ。」
「!」
「俺と有沢に、おかしなことなんて………あるはずないだろ?」
自嘲気味にそう言って笑う長友くんの顔を、私はただただ無言で見つめていた。
変わりゆく関係。
私と長友くん。
私と上条さん。
少しずつ、目には見えないほどのスピードで動いていく、それぞれの関係。
私はその変化に付いていくのが、やっとだったんだ。