社内恋愛のススメ
『プロジェクト』
初めて、長友くんが住んでいるマンションに行った。
1人暮らしをしているという、長友くんのマンションに。
理由は、簡単。
飲み直すという為だけに。
それは、色気のある理由なんかじゃない。
長友くんの部屋で迎えた朝は、感じたことのない思いを私にもたらした。
間近で見る顔。
意外と長い睫毛。
窓から差し込む光に照らされて、より明るく見えるダークブラウンの短い髪。
化粧品なんか使ってないのに、滑らかな肌。
男っぽい顔立ちなのに、どこか艶やかで。
妙に、色気を感じて。
胸が騒ぐ。
トクントクンと、心臓が軽やかに跳ねる。
この部屋で、こんな風に朝を迎えた女の人は、何人いるのだろう。
長友くんに彼女がいたなんて、聞いたことがないけれど。
他の人からも、もちろん長友くん本人からも。
何人の女性がこの部屋で同じ時間をともに過ごして、こうして間近にこの顔を見つめたのかな。
彼女も。
長友くんが結婚したいと言っていた人も、ここで、長友くんと朝を迎えたのだろうか。
こうして、長友くんのことを見つめていたのだろうか。
そう考えたら、息が出来なくなるほど苦しくなった。
気のせいだよ。
気のせい。
この息苦しさも、この胸の痛みも気のせいだ。
きっと、錯覚でしかない。
そう思わないと、上条さんと過ごした時間が偽りだった様に感じてしまいそうだから。