社内恋愛のススメ



オンとオフの使い分けが、上手いタイプなんだろう。

私の前じゃ、ふざけてばっかりだけど。



私は、きっと除外される。

そんなに仕事が出来る方でもないし、部長も私を頼りにはしていないだろうし。


そんなことを考えていた、その時、ふいに腕を強く引かれた。






グイッと、思いの外、強く引かれる腕。


体が傾く。

後ろへと、ガクンとバランスを崩してしまう。



「………っ。」


振り返れば、そこにあるのは長友くんの顔。

ちょっとだけ呆れた様に眉を下げた、長友くんの顔。


長友くんの顔を見た瞬間、私の胸が切ない音を立てて軋んだ。



「有沢。」

「………長友くん、何か用?」


動揺を悟られない様に、わざと冷たく返す。



そうでもしなければ、きっと溢れてしまう。

認めたくない感情が、顔にまで出てしまいそうだったから。



知られたくない。

こんなの、知られたくない。


揺れ動く自分なんて、認めたくない。



男と別れて、まだそれほど時間も経っていないというのに。

すぐにフラッとして、別の男に心を持っていかれている。


長友くんに、そう思われたくない。

軽い女だって、思われたくない。



長友くんなのに。

長友くん相手なのに。


長友くんはただの同僚なのに、そう思われるのが嫌だったんだ。



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