社内恋愛のススメ
気まずくても、仕事は放り出せない。
逃げたくても、仕事は待ってくれない。
だから、どんなに気まずくても、逃げたくても、頑張るしかないんだ。
プロジェクトが本格的に始まってから、1ヶ月。
夏を実感する余裕もないまま、終わってしまって。
その代わりに、秋がもうすぐそこまでやって来ている。
青々しい葉が、色付き始める。
緑から、いろんな色へと変わっていく。
その様は、まるで絵の具で塗り替えた様だ。
外で働く仕事ならば、季節の移り変わりを肌で実感することが出来るのだけれど。
ビルの中で引き籠って仕事をしている私には、未だに夏が終わってしまった実感さえもない。
クーラー漬けの毎日は快適ではあるけど、季節を忘れてしまいそうになる。
朝の涼しい時間に出勤して、夜が更けた遅い時間に退勤する。
朝早くから夜遅くまで、仕事ばかりの日々。
仕事漬けの生活を送っている、仕事人間の自分。
そんな私は、今、あることに行き詰まっていた。
会議室に、上条さんの低い声が響く。
上条さんの前には、ホワイトボード。
ホワイトボードには、プロジェクトに関することが大きく書かれている。
右上がりだけど読みやすい、丁寧な字。
上条さんの文字。
ホワイトボードに書かれた文字を指差しながら、上条さんは呟いた。